食で人を幸せにしたい。
料理好きな私がマクロビオティックに惹かれたわけ。
「You are what you eat.」
あなたはあなたが食べるものでできている。
英語の有名なことわざだが、私が初めてこの言葉を知ったのは、マクロビオティックとの出会いを通じてだった。
この言葉の意味をみなさんどのくらい理解しているだろうか?
「人間は食べ物のお化け。」
これはマクロビオティックの考え方を体系化した創始者、桜沢如一先生の言葉。
どちらも同じ意味の言葉である。
要するに、体の不調や体型は、勝手にそうなったのではなくて、全て自分自身が選んで食べてきたものによる結果なのだと言うことだ。
よく考えたら、当たり前のことだけど、飽食の時代を言われて久しい現代では、この事を置き去りにして、食に対する快楽の部分に重きを置かれているんだなと言う事に気付かされた。
子供の頃からお菓子作りが好き
幼い頃、母とプリンやシュークリームを作ったことで、中学生の頃からお菓子や料理に目覚め、社会人になってからは中華料理、懐石料理、テーブルコーディネート、自然食とさまざまな料理教室に通った。
そしてふと、お菓子や料理を作るとき、どこかでこれは体に良いものなのかどうか?を考えるようになった。
バターや卵、砂糖、お肉など、美味しいけれど、太ることを気にしたり、食べたことで病気の原因となることがあるということに矛盾を感じるようになった。
そんな時、食べるもので体を調えるマクロビオティックという考え方に出会い、その三原則と言われる「陰陽の調和」「一物全体」「身土不二」という理論に惹かれていった。
そして、冒頭の「You are what you eat.」と言う言葉に出会い、食を通じてマクロビオティックの考え方に共鳴。
もっと深く知りたくなり、クッキングスクール・リマで学ぶこととなった。
初級、中級、上級、師範、そしてインストラクターの資格まで一気に学んでいった。
いつか大好きな食の世界で仕事をしたい。その思いが強くなり、会社勤めをしていた私は会社にいる時間が勿体無いと思うようになり、今から12年前に料理家として生きていくために、退職した。
ツテなしアテなし実績なし
それまでもさまざま料理教室に通ったり、友人に料理を教えたり、菓子製造業の許可をとり、お菓子の販売を趣味程度で行ってきたが、料理の世界でどうやって仕事をするのかも全くあてがなかった。
とにかく自分にできることはやってやろうと、その頃毎日フェイスブックに自分が作った料理写真を投稿したものだ。
ツテもアテもないが、実績は自分でこれから作る!独立当初、拙い料理だけど毎朝作っては投稿したことで少しずついろんな人の目に留まるようになった。
私がマクロビオティックの料理家として目指していたのは、「食で人を幸せにする」ことだった。
幸せの定義は人それぞれだが、広告代理店時代、忙しい人ほど健康管理は必須だと思った。
体調が万全だと仕事もプライベートもその人本来の力が発揮できる。
そんな人のサポートがしたいと思っていた。
また、アレルギーや体質で動物性食品や白砂糖、小麦粉が受け付けられない人もいることを知り、そんな人が笑顔になるような食の提供をしたいとも考えた。
出張料理人8年、グルテンフリースイーツ講師を経て
開業してまもない頃、産後ケアの出張料理の依頼を受け、その後も何軒ものご家庭で、合計8年間も出張料理の仕事を継続していた。
グルテンフリーのスイーツ講座の講師を務め、販売も行った。
その中で自分が目指す料理の方向性とは?と考えることも多くなった。
食べることは日常のこと。日常続けられることが大切。
マクロビオティック、ヴィーガン、ベジタリアン・・・そう言われる料理でもスタイルはさまざま。料理教室を開催して、のべで200人くらいの生徒さんに教えてきた。
マクロビオティックの料理やグルテンフリーのスイーツやパンがまだ珍しかったこともあり、毎月のレッスンはいつも満席。
その時の私は生徒さんが目を引くような新しいお菓子や流行りの料理を教えていることが多かった。
全般的に華やかなもの、新しいものに飛びつく人が多いので、教室は盛況だった。
その一方で、せっかく教えても自宅で全く作らない人も多いことがわかった。
そして、だんだんと自分がやりたかった事とやっている事にズレが生じてきたと感じるようになった。
どちらかと言うと、料理もお菓子も手早く簡単に作れるものの方が自分は好きなんだ。と気がついたのも、この頃だった。
私のやりたいことは、これだ!
そして、ひょんな出会いでマクロビ保育園の給食を作る仕事をすることになった。
子供を育てたことがない私に務まるのかな?と最初不安だったが、初日で私は確信した。
私のマクロビオティック料理の原点はこれだと。
子供の口に入るもの、それはシンプルな調味料、季節の野菜、自然の甘味のおやつが求められていた。でもそれは子供に限ったことではなく、そこに料理の本質があると思った。
そこで冒頭の「You are what you eat.」の言葉が再度私の頭の中で鳴り響く。
子供の食は、大切な成長過程に大いなる影響を及ぼす。食の中で基本中の基本である。
でも、それは何も子供に限ったものでは、ない。
余計なものを使わない、食の基本中の基本こそ、飽食の時代と言われ、さまざまな不調に悩む現代人にとって、本当に必要なことだ。
健康になりたいと思う人のために、誰でも日常簡単にできて、美味しいと思える、再現性の高いものを作ることが私のやりたいことであり、また、ずっとこだわって、譲れない私の料理に対する信念であった。
「料理家あるある」・・・を払拭せよ!
それは、私はこんなに素晴らしい料理を作れます!ということをやってしまうこと。
例えば、街中で小回りの効くお買い物に行くための車が欲しい人に、ベンツやポルシェをおすすめするようなものだ。
確かに軽自動車よりもベンツやポルシェが素晴らしい車ということはわかっている。
しかし、街中でお買い物やお子さんの送り迎えがしたい人には使いにくい車だと思う。
料理家はつい、ベンツやポルシェ的な料理が作れますと表現したくなる。
こんなに素晴らしいスキルを私は持っていますとアピールしたがる。
しかし、本来健康に気を使い、日常実践したい人にとって本当に必要なのは、誰でも簡単に作れる料理ではないのか?
日常を大切に料理するプロフェッショナル、それが私
現在は世田谷にて飲食店と菓子製造業の営業許可を取り、予約制のマクロビオティック料理を提供している。
華やかさや珍しさではなく、日常の普通の料理を大切にした食事を味わってほしいと思っているからだ。
それが私の思う料理の本質。
私の店が本質の体験の場であるならば、それを実践する場が料理教室だ。
マクロビオティックの料理家として実践してきて、日常の料理や保育園でのマクロビ給食作りをした私が、自信を持って提供する。
再現性が高くて、シンプルで、健康的なお料理。
簡単な作り方で美味しく健康的な料理を教えるには、何度も試作をし、作る人の立場になって、作りやすい工程を確認していく。
そうして作ったレシピを一人でも多くの人に届け、その人の生活を豊かで健康的なものにしていくことが、私のやりたいことだ。
マクロビオティックは手段であって目的ではない。
これは何事においても肝に銘じている言葉。
私は幼い頃からキッチンで何かを作るのが好きで、「食で人を幸せにする」ことが私のミッションだと思っている。
でもそれは、「食で人を幸せにする」手段であり、厳格にマクロビオティックの教えをがんじがらめに追及するのが目的ではないのだ。
人はそれほど単純ではない。(私もね)
その人が培ってきた食生活の歴史や思い出も大切にしながら、その人が幸せになるように、料理をすることも私が大切にしている事のひとつだ。